今回、取り上げるのは、馬の走法について。
主に「ピッチ走法」という走法について見ていきたいと思います。
ピッチ走法がどのような走り方で、どのようなレースに強いのか。
実際の馬名を挙げて、見ていきます。
ピッチ走法とは
ピッチ走法とは、簡単に言うと「歩幅の小さな走り方」のこと。
馬の世界だけではなく、人間の陸上競技でも使われる言葉ですね。
一応、Wikipediaの引用を載せておきます
ピッチ走法(ピッチそうほう)とは、身長や速度と比較して小さい歩幅で、脚の回転を速くする走法
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%83%E3%
83%81%E8%B5%B0%E6%B3%95 出典元:ウィキペディア
説明にもあるように、歩幅が小さいことで、脚の回転が速くなるのも特徴です。
実際に、私がピッチ走法だと思う「ラッキーライラック」の走法を見てみましょう。
5番の黄色帽がラッキーライラックです。
歩幅が狭く、前脚を掻き込むように走るのが、ピッチ走法の特徴です。
先ほどの説明でもあったように、脚の回転数が他馬より多いことが分かります。
続いて、ピッチ走法と真逆の、ストライド走法の馬をご紹介します。
ストライド走法の代表例「サトノワルキューレ」
ストライド走法とは、文字通りストライド(歩幅)が大きい走り方。
私が、最近ストライド走法だと思った「サトノワルキューレ」を紹介します。
サトノワルキューレは、ディープインパクト産駒で、主に長距離の、直線の長いコースで活躍していますね。
実際に、フローラSの走法を見てみましょう。
4番の黒帽子がサトノワルキューレです。
周りの馬と比べても、かなり歩幅が大きいことが分かると思います。
ストライド走法の馬は、脚を高く上げ、歩幅が大きく、サラブレットの理想の走り方と言えるでしょう。
次は、ピッチ走法の強みについて説明します。
ピッチ走法の強み
ピッチ走法の強みは主に
・小回りに強い
・スピードの緩急に強い
・芝が渋っても大丈夫
・ダートに向く
一つずつ見ていきましょう。
小回りに強い
ピッチ走法は、歩幅が小さいので、コーナーを上手く回ることができます。
跳びが大きい馬に比べると、コーナー部で差をつけることができるのが強みでしょう。
スピードの緩急に強い
ストライドの大きい馬は、スピードに乗ってからは、そのスピードを持続する力に長けています。ただし、急に加速を求められるレースや、途中で不利を受けたりして再加速が求められることを苦手としています。
それに比べ、ピッチ走法の馬は、歩幅が小さいため、加速力に優れ、スピードの緩急に対応することができます。
芝が渋っても大丈夫
跳びが大きい馬は、雨などで芝が荒れた場合、本来の能力を発揮できないことがあります。
良くも悪くも、走り方が綺麗なので、良馬場の方がストライドの大きさを生かして走ることができるからでしょう。
それに比べ、ピッチ走法の馬は、良馬場ではストライド走法の馬に劣りますが、馬場が悪くなると、歩幅の小ささを生かして悪い馬場をこなすことができ、ストライド走法の馬に対して優位に立つことができます。
ダートに向く
ダートは芝に比べ力がいるので、砂に力が吸収されます。ストライドが大きい馬はダートでは能力を発揮しにくいです(馬場が湿ると、馬場が軽くなり芝寄りの適性が求められるので別です)
その点、ピッチ走法の馬は、力のいるダートでも、しっかり砂を捉えて走ることができるので、好走する馬が多いです。ブロードアピールは、ピッチ走法の馬で有名ですが、ダートで活躍しました。
次に、この強みを踏まえた上で、私がピッチ走法の代表例だと思う「エアスピネル」という馬について詳しく見ていきます。
ピッチ走法の代表例「エアスピネル」
私が思うに、この馬はピッチ走法を説明する上で、ぴったりの馬だと思います。
2歳時のGⅠ朝日杯FSの走りを見てみましょう。
武豊のGⅠ完全制覇を、ミルコ・デムーロのリオンディーズに阻止されたレースですが、このレースを見ても、前脚を掻き込むような走法で、リオンディーズと比べても脚の回転が速いことが分かると思います。
ただ、一歩一歩が明らかにリオンディーズの方が大きく、阪神1600mのような直線の長いコースでは、このように直線で差し切られてしまいます。ここに、ピッチ走法の弱点が垣間見えます。
脚の回転が速く、良くも悪くも同世代では崩れなかったエアスピネルは、そのまま日本ダービーに出走します。
日本ダービーはご存知の通り、舞台が東京2400m。エアスピネルには向かない舞台です。
実際に、日本ダービーの直線を見てみましょう。
最初に抜け出した、5番の赤帽子がエアスピネルです。
上位3頭に比べると、明らかに歩幅が小さいことが分かります。
ちなみに、上位3頭はすべてディープインパクト産駒。そもそも、脚の長さも上位3頭に比べると短いようにも思えます。
このように、ピッチ走法の馬は、直線の長い王道コースでは、ディープインパクト産駒のような溜めて切れるタイプには、まったく歯が立たないことがお分かりいただけたかと思います。
ただ、普通に走ったら優位に立てないピッチ走法のエアスピネルが、抜群のパフォーマンスを見せたのが富士Sです。このレースは不良馬場で行われました。
そう、先ほどもご説明しましたが、ピッチ走法の馬は渋った馬場が得意です。
普通のコースなら歯が立たない馬が、違う条件だと逆転してしまう。これが競馬の面白さであり、美味しい馬券につながります。
実際に、富士Sの直線を見てみましょう。
6番の青帽子がエアスピネルです。
15番のピンク帽子イスラボニータは、この渋った馬場にやや苦戦しているように見えますが、エアスピネルは歩幅の小さな走りで、しっかり渋った馬場を捉えて走っています。
結論
ピッチ走法の馬は、条件さえ揃えば、能力を発揮することができます。
逆に言えば、王道コースでは良くも悪くも善戦マンになってしまう。
ピッチ走法の馬を見つけた時は、買える条件に合致しているか、考えてみてはいかがでしょうか。